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嵯峨野の女人物語

横笛(横笛に関わる史跡・滝口寺)

滝口寺

「平家物語」維盛高野の巻で滝口入道と横笛の悲恋物語が挿入されている。この滝口入道と横笛を偲ぶ史跡が滝口寺(写真上)である。
 滝口時頼入道は、平重盛に仕えた武士。横笛は、平重盛の妹である建礼門院に仕えた雑仕(雑役の下級女官)である。今様・朗詠を始め、琴や琵琶、和歌にもすぐれていた。

 滝口入道は、清盛の西八条殿での花見の宴に横笛の舞姿を見て以来、恋しく思い、さらに恋文を送るようになった。二人の恋を、滝口の父が知っていさめる。「おまえは、名門の出にして、将来は平家一門に入る身上でありながら、なぜ、あんな横笛ごときを思いそめるのか」。 滝口入道は恋に迷う己を自責したが・・・・

歌石

生年十八歳の滝口入道は、嵯峨野の往生院で出家してしまう。横笛は出家の噂を聞き、自分のために世を捨てたのかと思う一方、恨み言も言いたい。 横笛は、後を追う。滝口人道は道心堅固として、 横笛と顔を合わそうとしない。横笛は、思いあぐねて近くにあった石に指の血で歌を書きつけたという「歌石」(写真上)が、いま滝口寺にある。この滝口寺の門(写真下)は、祇王寺のすぐ奥にある。

滝口寺の門

 滝口入道は、未練のある女性に住まいをみつけらては修行の妨げと思い、高野山に移った。横笛もその後すぐに法華寺で尼になるが、まもなく病に倒れる。
滝口入道は、このことを伝え聞いて、ますます仏道修行をし、高野の聖といわれる高僧になったという。

 また、別の説として「源平盛衰記」によると、17才の横笛は「片想いのままいかにながらえよう」と嵯峨野の大堰川に身を投げる。
滝口入道は驚いて大堰川に駆けつけ、死体をあげる。そして 横笛の骨を自らの首にかけ、寺々を供養して歩き、高野山に弔ったとしている。